西尾幹二のインターネット日録

候補者応援の講演(四)

 

 小泉首相は解散を決めた日に、テレビの記者会見で何を言ったかみなさん覚えているでしょう。ぐるぐる同じ所を回るように、一つのことを言いつづけたんですよ。なぜ民間にできることを民間にまかせると人は言いながら、郵政にだけそれが出来ないというのか。民間に任せたほうが、いいサービスができるはずだ。なぜ郵政だけは公務員でなくてはならないのか、本当に国民にこのことを聞いてみたい。私には当り前に思っていることを、なぜみんなが反対するのか、未だに私は信じられない、と、くるくる、くるくる回転するように言ったでしょ。いつも口を開けばこういう同じことを言うんですよ。郵政改革について決意の強さは口にするけれども、内実のこもった説明はただの一度もなされない。意図的なのか、構造を理解する知性がないのか、私は多分、相当に後者だと思っているのですよ。笑い事じゃないんです。

 いつも幼いまでに単純な観念を中心に円を回転するように語るばかりで、決意の固さは表明するが、およそ答になっていない。こういう状態、自分に不誠実で、国民に対してだけにわかに賛成か、反対かとたたみかけてきたわけです。

 大事なことはここから先なんです。今まで申し上げたことをもう一回整理しますと、窓口ネットワーク会社、郵便事業会社、それと郵便貯金会社、郵便保険会社。この四つを子会社とする親会社が、別に持ち株会社というかたちで別箇作られて、一応切り離しているのが臭いのですが、この持ち株会社は、とにかく10年間で四つの子会社の全株を売却することを義務付けられていて、そこで民営化が完成するとこういうことになっているわけです。スタートが2007年。

 よおく覚えておいてください、2007年という数字。

 さらにここでもう一つの会社が出来るんです。いろいろ難しい名前がついているんですけれども、公社承継法人というのが略称で、我々のお金330兆円というお金は旧勘定、今までの勘定です。それに対して新しい会社が作られると新しい貯金が入る。民間会社で新しい計算が始まります。これを新勘定。旧勘定と新勘定を分けますね、そうするとこの旧勘定というところに330兆というお金が貯っているわけですね。この旧勘定を会社継承法人つまり、この旧勘定のお金を保存して、保有する法人です。株じゃないんですよ。持ち株じゃなくて、このお金を保有する法人です。このお金こそ、日本国民の最後の虎の子です。

 もう10年以上我が国の銀行ががたがたになっている――銀行がおかしいのは今の日本ではよぉく知っていますね――にも拘らず、我が国の経済がとりもなおさずまだ安定し、韓国のようなIMF管理の国にならないで済んでいるのは、なぜでしょうか。これは郵便貯金の、このどーんとした安定したお金があって、これが国債をきちんと買って、民間の銀行業務を守っているからです。いいですか、皆さん、銀行は郵貯に守られているのです、日本では。

 国鉄は赤字でした。私鉄は黒字でした。だから民営化という声が上ったわけですね。しかし、郵便局は黒字で、銀行は赤字なんですよ。銀行の赤字がどんなに大きいかというと、11のメガバンクのうち、税金を払っている銀行はりそな銀行1行。りそな銀行は事実上の国営です。そこだけが税金を払っていて、他の銀行は税金を払っていないんです。のみならず、公的資金を注入されているんです。公的資金はどこから来るかといえば、郵便局のお金なんですよ。政府にはほかにお金がないんですから、なんにも。つまり、この国が成り立っているのは、郵貯、簡保というものが安定していることが、日本が韓国のような経済返済国にならないで済んでいる唯一のありがたいこと――これ、私が言っているんじゃないんですよ、野口悠紀雄さんという有名な経済学者がいるじゃないですか、ああいう人たちがちゃんとそういうことを言っているんです。私だけじゃないんです、これ何度も言いますけれど。

 さて、そこで旧勘定を保存する公社承継法人の話をいたしましたが、四つあって、持ち株会社があって、六つ目の会社です。この公社承継法人は、旧勘定の、つまりいままでの大きなお金の保有、保存の会社ですが、金の運用は自分でやらないと書いてある。自分では運用をやらない。運用というのはどういうことかというと、丁度皆さんが持っているお金を、まぁ銀行に預けても役に立たないけれど、投資信託をしてみようとか、外貨を買ってみようとか、ゴールドを買ってみようとか、なんにもやってもだめだから、最後には土地に穴を掘ってそこに埋めておこうとか、いろんなことを日本人はいまみんな考えているわけですが、そういうのを運用というのです。

 この運用を任されるのは公社承継法人じゃなきゃおかしいでしょう。自分で運用しなきゃ嘘でしょう。ところが、これが自ら運用しないとなっている。外部に委託して安全運用を図るというのです。運用を委託される外部はどういう外部かというと、さしあたりは新設された郵便貯金会社、郵便保険会社が運用を託されるということになっているんですよ。しかし皆さん、じつはここが危ないところなんですよ。この二つの会社は、日本の会社だから安心だ、と思っていいですか?じゃないのですよ。51%の条項はついていないんですよ。しかもこれは民間会社ですよすでに。民間会社は預かったものをどう使うかは自由じゃないですか。民間会社は政府の管理の外なんですから。ここがこの法律の一番危険きわまりないところでございます。

 そうしてですね、大事なことは日本にはお金を操る才能を持った、長い歴史を持ったユダヤ資本に比べられるような投資の才覚のある人間が育っていない。そんな才能はないんですよ。野田聖子さんのところに刺客として迎えられた女性がいますが、ああいう人が外国へ行って勉強してきて、偉そうに言ってやっているという程度でですね。郵政省のお役人が急に郵便貯金銀行の重役になったところで、そんな才能があるわけがないんですよ。結局どういうことかと言うと、外国に頼るという話にならざるを得ないんですよ。

 そして、なぜ公社承継法人をそっくり外国に売るなんてことは出来ないのかは、あまりに巨大すぎて、300兆なんてアメリカにだって買う力はないわけです。売る方も売りたくたって簡単にできない。けれども運用する権利、運用権を外国に売ることはできるわけです。すなわち民間会社なんだから、運用を託された外部、郵便貯金銀行や郵便保険会社は民間会社なんですから、どう運用しようが自由ですから、運用方法、運用する権利を外国の投資会社に委ねる。そういうようなことが簡単にできる。外国ファンドが必要とするのは、日本の金の名義を変えることではなく、実は日本の金を元に博打をすることなんです。これは皆さん、博打というと変に思うかもしれませんが、投資をすることです。今はホリエモンの時代になっているんですよ。

 つまり、お金がお金を産むという時代が来ていて、それを巧みにやっているのが、外国の投資会社なんですよ。日本にそれが出来る人がいなくて、適当にやられちゃうんです。ホリエモンなんて大した才能じゃないんですから、外国投資会社にやられちゃったんですよ、あの事件は。それで200億くらい、アメリカの会社リーマンブラザーズが儲けましたが、世界広しといえども、あんな瞞し討ちを教えるようなことをやって200億円稼げる国はこの日本しかないって、もうウハウハなんですよ、外国は。


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Posted by Nishio at 2005年09月04日 10:44 | コメント (5) | トラックバック (0) | Clip!!

この記事に対するコメント

ご指摘の通りなので、脱力感に囚われてしまう。

日本の株式市場が外国主導であることはご存知の通りである。
日本の投資家等は、自分で判断できず、ひたすら追随するしか能が
ないようである。
(理解できないブラック=ショールズの式を弄繰り回している
 のが関の山である。)
日興証券のように完全に軍門に下った会社も多い。

銀行が土地担保至上主義で、担保査定能力を失ったように、
証券会社もマネーゲームに踊っているうち、自前の判断能力を
失ってしまった。

既に、金融機関は、その資産の運用を外資に委ねるしかない悲惨な状況
にある。

民間の能力など、こと金融部門に関しては、記述したように
ほとんど無能力者に等しい。

郵政民営化において、資産運用を委ねた場合、どうなるか。
知的想像力を働かせれば分かることである。

さて、簡保が狙われていることは周知の事実だが、

次の目的は健康保険システム全体を支配下に置くことであることは、
年次改革要望書に明らかである。

http://www.op.cao.go.jp/kisei/giji/03/006/1-5.pdf

つまり、我が国民の生命の安全が支配下に置かれるということである。

(貧乏人はまともな医療を受けられない。
 高価な診断システムを受けられない、薬も処方されない。
 その許可権を保険会社が持つ)

という自体はすぐそこである。
アメリカでは、黒人より白人の平均寿命が10歳長いことは
よく知られている。(以前、CBSニュースであった)

政治家、官僚が国民の敵になっていた旧植民地の形態に、現在我が国は
近づきつつある。

Posted by: 素朴人 at 2005年09月04日 19:51

結局、やっぱり郵便局はつぶして、お金は日米銀行で山分けって話ですよね。
手数料の安い郵便局(貯金)なんかない方が銀行はもうかるし。
でも、公的貯金制度がなくなったら、どうやって公共事業とかやるんだろう?
アメリカの投資銀行が愛知県の橋作るのに、融資してくれるってわけですか?
でも、それ元は日本人のお金なのに、なんで利子払わなきゃならないの?
余計な中間搾取が入るだけじゃん。
どうせ橋作るなら、アメリカや三菱通さずに、郵便貯金から直接作ればいい。

結局これはあれですね、住専で銀行が公的資金を注入してもらえる旨味を
おぼえちゃったから、こういう話になるんですよね。
公的資金(この場合郵貯)を注入してもらえるなら、苦労してお金集める必要ないもん。

そのへんの小金持ったおやじに頭下げる必要ないもん。営業いらない。
集めるのは国がやってくれて、儲けるのはパソコンクリックするだけの銀行員や投機家。
いい世の中になったね。
だいたい今へたに製造業に投資するより、通貨投機でかせいだ方が、ずっと確実に
大きな利益が上げられるわけですからね。莫大な資金があれば。欧州の銀行はいま
これしかやってないですよ。

なんで、シティバンクやクレディ・スイスが大蔵省に土下座してまで、
この国に残ろうとしたか、考えてみるといい。宝の島なんですよ、この国は。
働き者でお人よしの国民がたんと住んでいる。そして首相は売国奴だ。

次は国民年金や健康保険も民営化されるんですかね?
昨今の新聞報道ぶりはその振りなんですかね?

Posted by: 松田 at 2005年09月04日 23:24

日本人ってそんなに能力の無い人ばかりなんでしょうか?
そんな人ばかりの国がなんで世界第二位の経済大国なんです?
外国人に運用させてなんて言いますが、どの国の金持ちでも
高リスクのヘッジファンドに全額運用させる人はいませんよ。
半分以上は低リスクの債権とかミドルリスクの株式投資に振り分けます。
それで、これらの低い運用益を補うために失っても痛くない範囲で
ヘッジファンドを使うんじゃないでしょうか?
当然ヘッジファンドは高い運用益を売りにしている以上、
損をさせないために必死で運用するんです。
毎期必死だから、脱法すれすれのハゲタカファンドになるんです。

仮に旧郵貯の運用にヘッジファンドを利用するとしても、立場は
超超上客のお客様なんですよ。
お得意様の国が滅ぶ程不利益になるような運用しますか?
そんな運用したら、たとえ50%の運用益を叩き出しても首になるのは明らかですよ。
彼等は国籍で動いてるのではなくお金で動いているんですから、
その点を契約しておけば自ら金のなる木を失うような判断はしませんよ。

長くなって済みません。

Posted by: よしあり at 2005年09月05日 02:43

昨日の緊急集会-郵政と拉致と教育を考える-を拝聴させていただきました。西尾先生のご意見に全面的に賛成です。

2回目の平壌訪朝後、この日録で、小泉さんを厳しく批判されていらっしゃいましたが、あの当時も、そうっだたかもと意を同じくしておりました。
実際、会談を終えて記者団の前に出てきた時の総理の顔つき、その後の家族会との面談時の無表情を、
テレビカメラは冷徹にとらえていたと思います。

あの心ここにあらずといった腑抜けの表情は、わたくしのような素人のおばさんにも、『いったい何があったの?』と想像たくましくさせるに充分なものでした。

あのようなまやかしと詭弁の方が、与党の党首であることの絶望。また、この外交懸案が載積する時期に(ブッシュ大統領との会談もドタキャンだとか・・・)たかが、郵政ごときを争点にした独善的な解散総選挙。内容空疎な演説。官から民への連呼。それなのに、なだれをうって同調する多くの国民。
この今の日本の異様な風景に本当に背筋が寒くなります。

先生がちらりと触れられたように、まだ、岡田さんのほうがまし(一応の彼なりのロジックは通っている)かもしれません。

さっさと不在者投票を済ませることのできたた過去の選挙のようには、私も心が決まらず、悩ましい限りです。
松原氏の緊急登壇もありましたが、苦戦のご様子。残念ながら選挙区が違い投票できません。あのような方にこそ、国政にもどってきていただきたいと、願わずにはいられません。

この選挙を憂う先生のお気持ち、お察しいたします。
時節柄、お身体ご自愛下さいませ。

Posted by: 琵琶 at 2005年09月05日 17:45

西尾先生の現在重要な提言は尊重いたしますが、吉本隆明が言ってましたが、教科書なんて暗記以外に読まない、西尾さんのような極一部の秀才が影響を受けただけだ、といってますが、それと同じような印象を持つのは真珠湾攻撃がルーズベルトの議会とのやりとりで、というようなところです。あまりに善意すぎやしないか。あまりに教科書を読む人間を善意に過大評価してやしないか。
西尾先生の近代西欧に対する視点が、ウェーバー風にゆがめられていないかと恐れます。失礼しました。

Posted by: 村西 at 2005年09月09日 01:45

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