西尾幹二のインターネット日録

日本の国連安保理常任理事国入りについて

小池 修
年齢:22歳
職業:大学生(専攻分野:英語学、韓国語学、韓国社会)

教育学部に在籍しています。2001年の教科書問題のときに西尾先生を知りました。教育問題、歴史問題、外交問題など幅広く関心を持っています。
guestbunner2.gif

 最近国連改革の呼び声が高まり、俄かに我が国の「国連安保理常任理事国入り」が話題になっている。
 外務省のホームページ(注1)によれば、2005年の国連通常予算に占める我が国の分担金の割合は19.468%、金額は3億4640万ドルにも上る。これは分担率・金額1位の米国(注2)に迫り、3位のドイツ(注3)の2倍以上である。
 これだけの割合、金額の負担を国民に課しているのだから、政府・外務省が国民に対する説明責任を果たすために国連の中枢部たる安全保障理事会への関与をより強めようとするのは政策として当然と言えよう。
 しかし、ここふた月程の議論を見ていると、名前だけ常任理事国になりさえすればいいという原理原則のない議論が横行しているように感じる。そこで我が国が常任理事国入りに際して固守すべき条件を提示したいと思う。
 
 まず第1に現在の常任理事国と全く対等な、拒否権を持った常任理事国であること。新たな常任理事国は拒否権を持たないとか、一定期間拒否権は行使しない(注4)とかいった議論があるが、これでは現在の非常任理事国と殆ど変わりないではないか。G4(注5)の常任理事国入りに反対している所謂コンセンサスグループ(注6)の準常任理事国を増やすという提案も同じ穴の狢である。こんなことでは意味のない「改革」と言わざるを得ない。
 
 第2に国連公用語(注7)に日本語を加えること。国連ホームページのトップページ(注8)に日本語で「ようこそ」と書かれていたら単純に嬉しいではないか。インターネット上で日本語で発信される情報が増加し、インターネットの世界では希少言語に属する日本語の地位が上昇すれば望ましい。また国連職員には英語かフランス語と、もうひとつの国連公用語の運用能力が求められるが、それに日本語が加えられれば「日本の国連分担金の金額に比べると非常に少ない」日本人職員(注9)を増やすことが容易になるだろう。さらに現在アジアを中心としている日本語学習者が地域的にも員数的にも拡大することも予想される。
 
 第3に旧敵国条項を完全に削除すること。これは国連憲章からの削除を求める決議が圧倒的多数で採択されているのであり(注10) 、常任理事国になるならないに係わらず当然国連憲章改正に際して完全に削除されるべきである。
 
 上記の3条件を満たした上での常任理事国入りが認められないのであれば、我が国は国連への経済的貢献を見直す必要がある。前述の外務省の資料によれば常任理事国である中国とロシアの分担率はそれぞれ2.053%と1.100%に過ぎない。
 同じく外務省の説明(注11)によれば分担率は「各国の国民総所得(GNI)の世界計に対する各国の比率」を基に算出する由であるが、我が国のGNIは4兆5741億6400万ドルに対し例えば中国のGNIは1兆1309億8400万ドル(注12)であり、分担率とGNIとが相応のバランスを取っているとは言い難い。
 また、「分担率の上限(シーリング、22%)」はGNIが日本の2倍を越える米国にとって都合のいい取り決めとしか思えない。我が国は何れも常任理事国である米国の半分以下、中国の4倍程度以上の負担を拒否すべきだ。そうすれば途端に国連は予算不足に陥り、自分の地位がかかっている国連職員は慌てふためき日本に泣きついてくることだろう。
 我が国は軍事大国たりえず、軍事力を行使できないのだから、経済大国たる地位を認識し、経済力を外交上の武器にすることを躊躇すべきでない。


1 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html
2 22.000%、4億3960万ドル(上掲外務省資料による)
3 8.662%、1億5410万ドル(同上)
4 http://www.sankei.co.jp/news/050604/kok064.htm
5 日本、ドイツ、インド、ブラジル
6 韓国、イタリア、パキスタン等
7 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
8 http://www.un.org/
9 国連組織の総職員数約6万名中、日本人職員総数は約1,400名。
http://www.unfpa.or.jp/unfpa/japan/japan.html#japan2による。
10 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B5%E5%9B%BD%E6%9D%A1%E9%A0%85
11 http://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/q_a/topic_5.html
12 世界銀行『Data Query from WDI database』による。両国とも2001年。


8/3一部修正

Posted by Nishio at 2005年08月02日 08:59 | コメント (3) | トラックバック (0) | Clip!!

この記事に対するコメント

最初は、とにかく名前だけでもいいので、橋頭堡を築くことが大切です。
1の下は0、成果がゼロの場合が、最も悲惨です。
このまま国民の萎縮が続いて、日本が滅亡してしまうかもしれない。

例えは悪いですが、セールスマンが、少しでも開いた扉に片足をかけてこじ入るぐらいの
バイタリティーが必要だと思います。

名前だけでも、国民の意識を改革するための材料としては充分ですし、
こうした外部からの巨大な力をきっかけとして、シェアの拡大を図らない限り、
保守の間抜けな人達は、これまでと同じマイノリティーの枠に押し込まれたままになる。

様々な要求は、中韓のほとぼりが冷めた頃を見計らって、少しずつ少しずつ、小出しにするべきです。
いっぺんに出したら反動が大きく、通るものも通らなくなる。

Posted by: N at 2005年08月04日 00:55

 まずはN様、貴重なコメントありがとうございます。

 しかるに、表現が抽象的過ぎて私の読解力の限界を超える部分があるようです。理解できた範囲でお答えしようと存じます。

第1段落について

 恐らくは拒否権がなかろうと「常任理事国」という名を取れという御主張かと存じます。しかし、拒否権がないか15年後に再検討ということでは、現在の状況(日本は今年の1月から安保理の非常任理事国です)とどこが変わるというのでしょうか。私はこれは成果が0と同義だと考えます。

 「国民の萎縮が続いて、日本が滅亡してしまうかもしれない」とのことですが、国連の常任理事国になれなかったぐらいで萎縮・滅亡するほど我が国の国民は柔ではないと思います。逆に現実の貢献度を考慮せず、日本やドイツなどを常任理事国にしない国連の方が現実への対処能力や世界の信頼を失い、萎縮・滅亡するのではないでしょうか。

第2段落について

 バイタリティが必要、私も賛成です。N様の例えに従うならば、「扉に片足をかけてこじ入る」だけではなく、売りたい商品を売りたい値段でしっかり売らないといけません。その際には卑近な例えですが、「これがなければ地震のとき家がつぶれますよ」などと脅し賺すことも必要でしょう。国際社会においては「詐欺罪」も「脅迫罪」もそれらを取り締まる警察組織もないので、正直言ってやったもの勝ちなのです。

第3段落について

 「保守の間抜けな人達」には私自身も含まれるのでしょうが、間抜けな脳みそではマイノリティだとは思っておりません。保守は戦後も常に「サイレント・マジョリティ」であったと思っております。60年安保の時でさえ「ノイズィ・マイノリティ」こそ安保反対を声高に叫んだものの、岸信介首相がいみじくも「後楽園球場は今日も満員じゃないか」と述べたように常に国民の大多数は保守を支持していたのです。これは現在においても『世界』や『前衛』より『文藝春秋』や『正論』の方が何倍も売れているという事実をもって証明できます。

 私が尊敬する経済学者・田岡文夫先生は「人の本音は言葉でなく実際の行動で判断せよ」とおっしゃいました。さらに言えば、逆に革新陣営の方が学会(教育界)、法曹界、マスコミ界ではそれなりの「シェア」を占めているものの(これを井沢元彦氏は「残留左翼」と命名しています)、一般社会においては退潮の一途なのではないですか。

第4段落について

 「様々な要求」というのは、例えば拒否権付与のことかと思います。これについて述べますと、まず拒否権付与に難色を示しているのは中国と韓国だけではありませんね。そもそもP5(現在の常任理事国)は皆自国の既得権益維持に汲々としながら、「国連の意思決定に支障をきたす」などと弄言し、拒否権付与に消極的です。これは「ほとぼりが冷めた」後でも変わらない彼らの性向と言えます。

 さらに、拒否権があろうとなかろうと常任理事国入り自体に否定的な国は、新たに常任理事国入りをめざす諸国の周りに1,2カ国ずつ存在します。日本の常任理事国入りについて反対しており、当然拒否権付与にも反対する中国と韓国(この際北朝鮮は措きます)ですが、この2カ国は分けて考える必要があります。まず韓国ですが、金泳三大統領は1995年の国連総会における演説で日本の国連常任理事国入りについて「その方向でコンセンサスができれば強く反対はしない」と述べたにもかかわらず、この10年で北朝鮮に取り込まれて、感情的な「日本憎し」、或いは「嫉妬」の劣情で反対しているに過ぎません。

 従って、これは韓国人の気質でもあるのですが、「ほとぼりが冷め」れば一時的な激情を忘れて歩み寄ってくる可能性はあるでしょう。しかし、中国に関して言えば、例え現在の靖国神社参拝問題などの諸懸案がどのような形であれ一段落して「ほとぼりが冷め」ても、前述のように既得権益を失わないために、「様々な要求」に賛成はしてくれないでしょう。

Posted by: 小池 修 at 2005年08月05日 08:53

日本の常任理事国入りには反対です。今の日本は莫大な金額の借金があり高額な分担金を払う余裕などどこにもありません。
政府は常任理事国入りによって特別な情報を手に入れることができるとしていますが、それが今までにばら撒いた金とさらに払うことになる金とに見合うか冷静に比較してもらいたいものです。そんなことをするぐらいなら自国の諜報機関を強化するほうがずっと確実で安くあがるような気がしますが。
政治家たちを見ているとただ単に常任理事国になるというステイタスがほしいだけでそれが果たしてそうするだけの価値があるかなどはまったく眼中になさそうです。
とにかく今の日本は経済大国ではなく借金大国です。国際貢献などという美辞麗句を言う前に国内でしなければならないことを山のようにあると思いますが。

Posted by: カラス at 2006年05月22日 18:52

コメントを投稿する




保存しますか?

太字 イタリック アンダーライン ハイパーリンク 引用
(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)


この記事のトラックバックURL


この記事に対するトラックバック

この記事に対するトラックバックはまだありません。



Made with dreamweaverMade with fireworksPowered by Movable Type 3.33-jaPowered by Wandering Wind
Copyright : [Articles] (C) 西尾幹二のインターネット日録 All Rights Reserved.
[Comments/Trackbacks] ... Authors of those have rights.